第二六篇 田ごしらえ

田ごしらえ田ごしらえといえば、時期的に5月を思い浮かべるが、実際は寒中から始まっていた。粗鋤きといって、平田(稲刈り後そのままの田)を耕して畝をつくるのである。耕土を寒風に晒すことによって土質を改良し、あわせて害虫を駆除するのが狙いである。2月から3月にかけては土手焼きの時期でもあった。枯れ草を焼却してあとの農作業をやり易くするためと、害虫駆除が目的である。土手焼きは山間の田んぼでも行った。延焼を防ぐため山際に充分散水して、風が比較的穏やかになる夕方を待って土手の端から点火した。枯れ草が繁茂しているところは上部から点火するなどの工夫が要った。5月に入ると土手や畦の若草が生長してくるので、草刈り(わて刈り)が始まる。苗代は稲の種を蒔く田んぼで、成長まで50日ほどが必要なので、田植えの時期を勘案して蒔く。いよいよ田んぼに水が入ると、田鋤きが始まる。元肥を施したあと、粗鋤きの畝を切り返して、新しく畝をつくる。この作業を繰れ返しと呼んだ。次に水漏れを防ぐため、畦前(畦に近いところ)を練り返す(あがた鋤き)。馬鍬で土を砕いたあと板をつけて平らにする。一連の作業は、すべて牛の力によるものであった。下回りの作業は、畦塗りをし、代掻き鍬で田んぼをならす。土手際から清水が湧き出るところには、追手塗りをして溝を作る。苗代から苗を運んできて苗打ちと息つく間もない忙しさであった。名塩探史会