第八篇 御坊のほんこさん

御坊のほんこさん浄土真宗の宗祖、親鸞聖人のご恩徳に感謝する法会を報恩講と呼ぶ。聖人のご命日よりも早く執り行うのが常で、名塩御坊教行寺では、毎年11月16、17、18日にお勤めがあり、御坊のほんこさんで親しまれていた。当日は、組内法中(そないほっちゅう)の僧侶20人ばかりが、華やかな色衣をまとい仏間右の余間に着座、荘厳な雰囲気に包まれた。雅楽(笙、ひちりき)の奏楽に導かれて続経が始まり、締めくくりには鉦と太鼓が鳴らされた。この鳴り物のことを参拝者たちは、ジャラリンポンと呼んだ。近郷からは、十三日講の方々をはじめ大勢のお参りがあり、本堂に入り切れない人は縁側で経文を唱え、法話を聴聞するほどであった。報恩講は、単に教行寺の佛事にとどまらず、名塩地域における行事の一端という色彩を帯びていたので、大逮夜の勤まる17日は、小学校も半ドンであった。また各家とも精進料理に徹していたので、店には肉や魚は置かなかった。期間中は、山門から西の道路脇に30あまりの出店が並び賑わった。店の照明には3軒に1個ぐらいの間隔で、カーバイトランプが灯されていて、その匂いと炎のゆれが独特の情緒をかもし出していた。回転焼き、わた菓子、どんぐり飴、樽あわし柿、関東煮、生姜板などの食べ物や、おもちゃ、輪投げ、覗きからくり、射的など、日ごろ目にしないものばかりなので、握ったお金と相談しなければならなかった。名塩探史会